小学生の「come」の間違いから見える英語学習の構造
先日の小6クラスでの出来事です。
授業中に「Cathy Carter comes の主語を I にしたら、come はどう変化する?」と質問してみました。
教室はしばらくシーンとした後、数名の子が手を挙げてくれました。
返ってきた答えは「came!」、つまり過去形です。
違うよ、と伝えると、今度は「went!」と声があがります。
さすがにそれは別の単語なので笑ってしまいましたが、こうして自分の考えを口に出してくれる積極性は本当に素晴らしいと思いました。
正解はもちろん「I come」なのですが、子どもたちは「came」や「went」といった別の知識を総動員して答えようとしているのです。
中学生になっても解消されない理解の曖昧さ
小6の段階でこうした混乱があるのは、まったく問題ありません。
大切なのは正解を出すことよりも、自分の頭で考えて声に出してみることだからです。
ただ、この理解の曖昧さが中学生になっても解消されないケースが少なくありません。
学校や塾で文法や単語を学んでいくうちに、知識が増えるどころかかえって頭の中が混乱してしまう子も多いのです。
結果として、文法を「部分的に知っている」状態で止まってしまいます。
主語によって動詞がどう変化するのか、現在形と過去形の違いは何か、といった基礎が整理されないまま、中1から中2、中3へと進んでいきます。
すると英作文や長文読解に挑戦しても、頭の中でバラバラの知識がうまく組み合わさらず、何をどうすればよいのか分からなくなってしまうのです。
受験期の「フィーリング英語」
やがて受験期を迎えると、子どもたちは難しい過去問題を何度も解くことになります。
しかし、文章の意味が理解できていないために、ほとんど「フィーリング」で答えるしかありません。
その結果、どれだけ演習を積んでも点数が安定せず、努力が報われないという状況に陥ります。
頑張っているのに結果につながらない――そんな悪循環が起こるのは、まさに小さな理解を積み上げられないまま学年が進んでしまった構造が原因です。
中学文法を「ずっと」やるべき理由
私はいつも思うのですが、中学で学ぶ文法というのは本当はそれだけで十分すぎるほど大事な内容です。
だからこそ「中学の文法をずーっとやればいい」と考えています。
わからなければわかるまでやって、ひたすら基礎構文を回す。
自由自在に使えるよう訓練していく。
それができなければ、高校で扱う複雑な文法を理解できるはずがありません。
逆に中学の基礎がしっかりしていれば、高校の学習はそこまで苦労なく吸収できるのです。
塾で点数が伸びない理由
ただ現実には、「ついていけない子」が塾に通い始めるケースも少なくありません。
けれども、そういう子が塾で英語の点数を大きく伸ばした、という話はほとんど耳にしません。
なぜなら、彼らは「わからない内容」を学びに行き、そこでさらに「わからない説明」を受けているからです。
つまり、理解できないものを繰り返しても理解にはつながらない。
必要なのは、一度立ち止まってでも中1の基礎に戻ることなのです。
英検と「中1文法」
私の経験上、英検準2は受かったのに2級が受からない…という人は、ほぼ間違いなく「中1文法」が微妙です。
2級は「量でカバーできる級」なので、文法が弱くても膨大な量の英語に触れていれば受かります。
高校生になれば精神的にも大人になるため、文法がボロボロでも量で押し切れるケースもあります。
でも「どうしても受からない」と悩む子の99%は中1文法に穴があります。
だからこそ、相当な数の中学生が伸び悩むのです。
高校生になっても直らない「基礎の抜け」
昔、こういう子がいました。
「I have a car.」を否定文にしようとして「I haven’t a car.」にしてしまったのです。
やりとりをしていくと、「are」を使おうとしたり、「can」と混同したり…。
最終的には「do」を思い出して「I do not have」にたどり着きました。
でもこれは小6や中1の会話ではなく、高校1年生の時のやりとりです。
基礎が抜けたまま中3まで進んでしまうと、こういう状態になります。
ここまでくると、週1のマンツーマンレッスンでも焼け石に水です。
集団塾ではそもそも扱ってくれない内容なので、ますます置き去りになってしまいます。
無駄な夏期講習にしないために
ですから、この状態で集団塾の夏期講習などに通っても「お金と時間の無駄遣い」になってしまいます。
英検の級もあまり指針になりません。
特に準2プラスまでは文法がわからなくても受かるので、「級があるから大丈夫」とは決して言えないのです。
塾に通わせる場合は、まずはお子様の位置を確認することが大切です。
中3だから中3の受験クラスに入れる、といったやり方では、分からないことだらけのまま大金を投じることになります。
そんなこと言ったって受験がある!と思われるかもしれません。
ですが、無理やり中3クラスに入れてしまえば、高校英語でさらに悲惨な結果を招きかねません。
英語が安定しないままでは、大学受験は相当高い壁となります。