英語教育に関わっていると、よく耳にする2つの誤解があります。
ひとつは、 「英語がペラペラなんだから、テストなんて簡単でしょ?」
もうひとつは、 「テストで高得点なんだから、英語ペラペラなんでしょ?」
一見、どちらも納得しそうな話ですが、実はこの2つの発想こそが英語学習をややこしくしている原因の一つです。
そしてこの誤解を解くカギになるのが、「英語の処理能力」という考え方です。
英語の「処理能力」とは?
英語の処理能力とは、単語や文法の知識を持っているだけではなく、聞いたり読んだりした英語を瞬時に理解し、反応できる力のことです。
たとえば:
- 会話中に意味をすぐに捉えて返答できる
- リスニング中に内容をリアルタイムで理解できる
- 長文を読むときに、スムーズに意味を取れる
これは「頭の中で訳す」のではなく、英語を英語のまま処理できる力とも言えます。
英語がペラペラでも、処理能力とテスト力は別物
帰国子女やおうち英語の子どもたちは、処理能力が高く、話すのが得意なことが多いです。
でも、いざテストとなると…
- 三単現の”s”を忘れる
- スペルミスが多い
- 文法ルールに沿っていない
これは、「感覚的な処理能力」はあるけれど、「正確さや形式対応力」が弱いことが原因です。
処理能力とテストの得点力は別物なのです。
テストで高得点でも処理能力が低いことも
逆に、英検や学校のテストで高得点の子が、
- 英語を話すと詰まってしまう
- 聞き取りが苦手
- 単語を即座に使えない
ということもよくあります。
このような子は、知識はしっかりあるけれど、それを「素早く使う力(処理能力)」が育っていない状態です。
「英語力」=知識 × 処理能力 × 表現力
英語力は、
- 知識(語彙・文法)
- 処理能力(スピードと自動化)
- 表現力(話す・書く)
の3つが組み合わさって成り立ちます。
だからこそ、
- 「知識はあるけど使えない」
- 「話せるけど書けない」
- 「感覚はあるけど形式に弱い」
といったアンバランスが生まれるのです。
英語教育では、この3つの力をバランスよく育てることが求められます。
テストができる子にも、処理力を
話せる子にも、知識と正確さを
英語の学びは一方向ではありません。
「知っている」と「使える」のあいだにある「処理能力」というステップを意識することで、
英語力はもっと深く、確かなものになっていきます。
