コールデコット賞(Caldecott Medal)
(アメリカ絵本の最高峰のイラストレーション賞)
歴史
コールデコット賞は、1938年に創設されたアメリカで最も権威ある絵本イラストレーションの賞です。
授与するのはアメリカ図書館協会(ALA)の児童図書館サービス部門(ALSC)。
名前の由来は、19世紀イギリスの挿絵画家 ランドルフ・コールデコット(Randolph Caldecott)。
彼は絵本における「絵の力」で物語を豊かに語るスタイルを確立し、近代絵本の基礎を築いた人物です。
目的と意義
- 絵本の芸術性を評価する
コールデコット賞は、文章ではなく「絵」に焦点を当てています。絵がどれだけ子どもに物語を伝え、感情を動かし、物語体験を深めるかが重視されます。 - イラストレーターへの評価
多くの文学賞が作家を対象とするのに対し、この賞は イラストレーター本人 に贈られるのが特徴です。 - 児童文学における役割
「ニューベリー賞が文章を評価する賞なら、コールデコット賞は絵を評価する賞」といえ、両者で児童書全体をカバーしています。
選考方法(仕組み)
- 主催:ALSC(アメリカ図書館協会児童図書館サービス部門)
- 審査員:図書館員や教育関係者からなる委員会
- 対象作品:前年にアメリカで出版された絵本
- 評価基準(ALA公式より要約)
- 芸術的な技術(線、色、構図など)
- 絵が物語やテーマをどれだけ効果的に伝えているか
- 絵と言葉の統合性
- 子ども読者に与える印象と想像力の喚起
- 受賞数:
- 毎年1作品が「Medal(大賞)」
- 複数の「Honor Books(名誉賞)」
ALSCとは?
ALSCは、アメリカ図書館協会(ALA: American Library Association)の中にある部門で、特に児童向け図書館サービスや読書推進活動に取り組んでいます。
子どもたちの読書活動を支援するために、さまざまなプログラムや研修を提供し、さらに児童書に関する著名な賞を授与しています。
社会的影響
コールデコット賞は、絵本業界と教育現場に大きなインパクトを与えています。
- 出版界:受賞作は必ずベストセラー化し、長期間出版され続けることが多い。
- 教育現場:図書館や学校の絵本コーナーに必ず置かれる「定番」となる。
- 国際的影響:多くの作品が翻訳出版され、日本を含め世界中で愛読される。
- 美術的評価:単なる子どもの本ではなく「芸術作品」としても位置づけられる。
論争と批評
長い歴史の中で、コールデコット賞にも批判や論争が存在します。
- 「絵の芸術性を重視しすぎて、子どもにとってわかりにくい作品が選ばれる」
- 「受賞作の多様性が不足している」という指摘(特に人種・文化背景に偏りがあるとの批判)
- 「イラストは優れているが、物語としては退屈」という評価もあり、絵と言葉のバランスが議論されることもあります。
これらの議論は、賞のあり方を常に問い直すきっかけとなっています。

代表的な受賞作
古典的名作
- 『スノーウィーデイ (The Snowy Day)』 by Ezra Jack Keats – 1963年 Winner
- 『かいじゅうたちのいるところ (Where the Wild Things Are)』 by Maurice Sendak – 1964年 Winner
- 『Why Mosquitoes Buzz in People’s Ears』 by Verna Aardema, illus. by Leo & Diane Dillon – 1976年 Winner
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1980〜90年代
- 『Saint George and the Dragon』 by Margaret Hodges, illus. by Trina Schart Hyman – 1985年 Winner
- 『Tuesday』 by David Wiesner – 1992年 Winner
- 『Rapunzel』 by Paul O. Zelinsky – 1998年 Winner
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2000年代以降
- 『The Invention of Hugo Cabret』 by Brian Selznick – 2008年 Winner
- 『A Sick Day for Amos McGee』 by Philip C. Stead, illus. by Erin E. Stead – 2011年 Winner
- 『This Is Not My Hat』 by Jon Klassen – 2013年 Winner
- 『Finding Winnie』 by Lindsay Mattick, illus. by Sophie Blackall – 2016年 Winner
- 『Watercress』 by Andrea Wang, illus. by Jason Chin – 2022年 Winner
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まとめ
コールデコット賞は「絵本の芸術性を世界に示す賞」として、児童文学におけるビジュアルの力を証明し続けてきました。
ニューベリー賞が「物語の言葉」を讃えるのに対し、
コールデコット賞は「絵の力」を讃える
――この2つの賞はアメリカ児童文学の両輪と言えるでしょう。
教室でこの賞の本をコツコツ集めています