セオドア・スース・ガイゼル賞(Theodor Seuss Geisel Award)
(初めての“ひとり読み”を応援する本のための賞)
歴史
セオドア・スース・ガイゼル賞(Theodor Seuss Geisel Award)は、2006年に創設されたアメリカの児童書賞です。
授与するのはアメリカ図書館協会(ALA)の児童図書館サービス部門(ALSC)。
名前の由来は、世界的に有名な絵本作家 ドクター・スース(Dr. Seuss、本名:Theodor Seuss Geisel)。
『キャット・イン・ザ・ハット』や『グリンチ』などの作品で知られ、リズミカルでユーモラスな文体は「子どもが自力で読む」喜びを広めました。
ALSCとは
ALSC=アメリカ図書館協会の児童サービス専門部門。
児童図書館員の専門ネットワークであると同時に、児童文学賞の選定を通じて「どの本が子どもたちにとって価値あるものか」を示す存在です。
こちらの詳しい内容は別ページにあります。
目的と意義
対象年齢:幼児〜小学校低学年
役割:「読み聞かせから、自分で読むへ」という橋渡しをする本を評価する
意義:子どもが「最初に一人で読めた本」として記憶に残るような作品を顕彰し、初期読書体験を支えること
選考方法(仕組み)
主催:ALSC(アメリカ図書館協会児童図書館サービス部門)
審査員:児童図書館員や教育者を中心に構成
対象作品:前年にアメリカで出版された、初期読者向けの絵本・リーダー本
評価基準
- 簡潔で明快な文章(短い語彙・繰り返し・リズム感)
- 絵が読みを助けていること(イラストが意味を補強)
- 初期読者が成功体験を得られる構成(達成感のある物語)
- 幼い子どもに適したユーモアや魅力があること
受賞数:
- 毎年1冊が「Winner(大賞)」
- 複数の「Honor Books(次点)」
社会的影響
読書教育の現場:ガイゼル賞受賞作は「初級リーダー」として学校や図書館で必ず紹介される。
出版界:児童向けリーダー本市場を活性化させ、新しい作家やイラストレーターの登竜門となっている。
読書文化:「最初に自分で読めた本」が子どもの自己肯定感や読書習慣を支える。
論争と批評
- 「あまりに文章が簡単すぎるのでは?」という批判がある
- 一方で、「最初の一冊に必要なのは『易しさ+楽しさ』」という擁護の声も多い
- 多様性については、近年「文化的背景の異なる子どもにも届く本」が意識的に選ばれている
代表的な受賞作
初期の受賞作(2006〜2010年)
- 『Henry and Mudge and the Great Grandpas』 by Cynthia Rylant – 2006年 Winner
- 『There Is a Bird on Your Head!』 by Mo Willems – 2008年 Winner
- 『Are You Ready to Play Outside?』 by Mo Willems – 2009年 Winner
2010年代
- 『Bink and Gollie』 by Kate DiCamillo & Alison McGhee – 2011年 Winner
- 『The Watermelon Seed』 by Greg Pizzoli – 2014年 Winner
- 『You Are (Not) Small』 by Anna Kang, illus. by Christopher Weyant – 2015年 Winner
2020年代
- 『Stop! Bot!』 by James Yang – 2020年 Winner
- 『See the Cat: Three Stories About a Dog』 by David LaRochelle, illus. by Mike Wohnoutka – 2021年 Winner
- 『Fox at Night』 by Corey R. Tabor – 2022年 Winner
まとめ
ガイゼル賞は、ニューベリー賞やコールデコット賞、プリンツ賞と並ぶアメリカの主要児童書賞ですが、対象年齢がもっとも低いのが特徴です。
「初めて自分で本を読めた!」という達成感を与える作品を評価することで、子どもの一生の読書習慣を支える、大切な役割を担っています。
おまけ:位置づけ
- ニューベリー賞 → 文章(小学校中学年以上)
- コールデコット賞 → 絵本のイラスト(幼児〜低学年)
- プリンツ賞 → ヤングアダルト(中高生)
- ガイゼル賞 → 初めて自分で読む子向け(幼児〜低学年)
つまり、ガイゼル賞を含めると、
「読み聞かせ」から「初めての自力読書」、さらに「児童文学」や「YA」まで、すべての年代をカバーできることになります。
