文法は「形」だけじゃない!——どうすれば使える知識になるのか?

多くの生徒を見てきて感じるのは、
 文法を理解できない子は一定数いる」 ということです。

また「理解はできるけれど、いざ使うときに使えない」という子も少なくありません。

しかも、それは難しい文法ではありません。
中学1年生で学ぶごく基本的な文法でつまずいているケースが目立つのです。

たとえば——

  • be動詞と一般動詞を同時に使ってしまう
  • 否定文や疑問文のときに、どちらを使えばいいか分からなくなる

こうした 「基礎のつまずき」 が、その後の英語学習に大きな影響を与えていきます。

文法は「形」だけではない

なぜ、こんなにシンプルな文法でも正しく使えない子が多いのでしょうか。

それは、文法を「形のルール」とだけ捉えてしまっているからです。

応用言語学者の Marianne Celce-Murcia と Diane Larsen-Freeman は、

文法を次の3つの側面で捉えることを提唱しています。

  • Form(形) … 文法のルールそのもの。
  • Meaning(意味) … その文が伝えている内容。
  • Use(使用) … 実際の文脈でどう使われるか。

この3つがそろって初めて、文法は「使える知識」になります。

文法は Form・Meaning・Use の3側面で捉える

Form(形)

文法構造・形式の側面。

  • 単語の並び方、語形変化(s をつける、過去形、助動詞の使い方など)
  • 文法ルールや構造(例えば He plays soccer. の形、三単現の “s” の付け方)
  • 例外や変化、構文パターン

この「形」を誤って理解していると、文法的に正しい文を作るのが難しくなります。

Meaning(意味)

その文法構造が伝える意味の側面。

  • その文が 何を意味しているか?
  • どういう意味の区別があるか(例:She’s reading vs. She reads)
  • 形を使うことでどんなニュアンスが出るか(進行中・状態・習慣など)

つまり、形を使って 何を伝えるのか を理解できることが重要です。

Use(使用)

実際の文脈・使用場面でどのように使われるかの側面。

  • フォーマルかインフォーマルか、口語か文章か
  • どの場面でその構文が出てくるか(会話・報告書・日記など)
  • 使用頻度や慣用表現、条件・制限

たとえば、進行形 (present progressive) は会話でよく使われるけれど、正式な文章ではあまり使われない、というような「使われ方の傾向」もこの “use” で説明されます。

The Grammar Book でもこのような三面観点で文法を記述・指導案を構成していることが示されています。

「理論はわかるけど、実際に学習者は何をすればいいの?」というのが一番知りたいところですよね。

そこで、学習者が自分でできる行動ステップに落とし込んだ形にしてみます↓

文法を「形・意味・使用」で学ぶための実践ステップ

形(Form)を確認する

  • 文法書や授業でルールをチェック
  • 短い例文を3つ書き出してみる
  • 発音やつづりも声に出して確認

 やること:教科書の例文をノートに書いて理解してから音読する/同じパターンのものもやってみる

意味(Meaning)を理解する

  • その形が「何を表しているのか」を日本語で言えるようにする
  • 似た形と比べてみる(例:He plays soccer. / He is playing soccer.)
  • 「この違いを友達に説明できるかな?」と考えてみる

やること:例文を日本語に訳して、他の時制や形と比べる

使用(Use)を体験する

  • 実際にその文を使って自己紹介や友達のことを話してみる
  • 会話アプリや授業でその形を意識的に使う
  • 自分の日記やメモに1文だけでも入れてみる

やること:今日の出来事を三単現を使って書く
例:My mother cooks curry today.

フィードバックを受ける

  • 間違ってもOK、とにかく使ってみる
  • 先生や友達から直してもらう
  • 「なぜ違うのか」を必ず確認する

やること:先生に見てもらって添削されたものを「間違えた文を直してノートにもう一度書く」

まとめ

文法は単なる「形の暗記」ではありません。
Form(形)、Meaning(意味)、Use(使用)の3つをそろえて学んでいくことで、初めて「使える知識」になります。

英語学習で大事なのは、 ルールを覚えるだけで終わらせないこと。
頭で理解し、意味をつかみ、実際に使ってみる。

このサイクルを繰り返すことで、文法は「テストのための知識」から「自分の英語力」へと変わっていきます。

参考文献The Grammar Bookはこちら↓

追記:日本語力と文法の関係

ただし、どれだけ「形」を練習しても、日本語力が十分でなければ定着しません

特に、品詞の理解がないと be動詞と一般動詞の区別 など、基本的なルールですら分からなくなってしまいます。

主語とは?

動詞とは?

形容詞とは?

この理解がないと、英語の文法はなかなか理解ができません。

つまり、英語の文法を学ぶ前に、母語である日本語の文法的な理解を育てておくことがとても大切です。

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