インプット仮説 i+1理論
英語習得について調べていると、よく目にするのが
「i+1が大事!」
「理解可能なインプットを!」
という言葉。
でも一方で、英語教育に関わっていると出会うのが「多読」。
多読は「簡単なものを大量に読む」のが基本。
となると、こう疑問に思いませんか?
「え、i+0(簡単すぎ)では成長しないんじゃなかったの?」
「多読とi+1って矛盾してないの?」
今日はその疑問について、私なりの視点でまとめてみたいと思います。
i+1理論とは?
言語習得の理論で有名なスティーブン・クラッシェン博士が提唱したのが
「i+1」という考え方。
- i = 今の自分のレベル
- +1 = ちょっとだけ難しい部分(まだ知らないけど推測できる範囲)
この「+1」があるからこそ、人は言語を自然に伸ばしていける。
これが「理解可能なインプット(Comprehensible Input)」という理論です。
難しすぎても理解できないし、簡単すぎても成長しない。
英語も筋トレと同じで、ちょいキツが一番効くというわけです。
多読は「i+0」?
一方、多読(Extensive Reading)の基本ルールは:
- 9割以上わかるやさしい本を選ぶ
- 辞書を使わず、文脈で意味を取る
- わからなくても止まらない
つまり「i+0(すでに知ってることばかり)」がベースになります。
すると、こんな疑問が出てきます。
「それじゃ成長しないんじゃないの?!」
実は両方、大事
ここで大事なのが、
i+1と多読は矛盾していない。むしろ、補い合っている。
ということ。
項目 | 多読 | i+1 |
---|---|---|
難易度 | 90〜98%理解できるやさしい本 | 80〜95%理解できるやや難しい素材 |
目的 | 英語の語順、語感、流暢さの定着 | 新しい語彙・表現のインプット |
段階 | 入門〜中級向け | 中級〜上級向け |
必要なもの | 楽しさ、スピード、量 | 意味の推測力、集中力、考察力 |
つまり、
🟢 多読で「土台=i」を育てる
🔵 i+1で「次のステージ=+1」に伸ばす
このように役割が違うんですね。
多読で「成長しない」は本当?
これは半分正しくて、半分誤解でもあります。
🔰初心者〜中級者:多読は超有効!
i+0(知っている内容)をたくさん読むことで
語順・構文・語感が「感覚的に」定着します。
⚠️上級者:i+0だけでは語彙が伸び悩む
この段階に入ると、英語の文章がどれも似たり寄ったりに感じてしまい、
いわゆる「CEFR B1の壁」(語彙が子どもレベル)にぶつかりやすくなります。
だからこそ、多読に加えて、i+1のインプットが必要なんですね。
やさしい英語の「落とし穴」もある
実際に私の娘も、おうち英語で多読を続け、
スピーキングやリスニングでは高評価をもらえました。
ところが——
「ライティングの語彙力が足りない」と先生に言われたのです。
なぜ?と思ったら、原因はすぐにわかりました。
- やさしい英語ばかり読んできた
その結果、「言いたいこと」はあるけど「表現する語彙」が足りない。
これは易しいインプットだけに頼った結果として、見逃せないポイントだと感じました。
多読+i+1でステージアップ!
- 多読は語順、リズム、英語感覚を育てる大事な基盤づくり
- i+1は「その先」に行くための、新たな気づきの種まき
- どちらか一方ではなく、どちらも必要なプロセス
特に学習が進んできた段階では、
やさしすぎる英語だけではB1レベルで頭打ちになりやすいことを知っておくと、
次の戦略が立てやすくなると思います。
最後に
英語学習は「読む量」も「読む質」も大事。
多読をしながら「ちょっとだけ難しい」内容にも少しずつ挑戦していく。
バランスの取れた学びをしていきましょう!
