I’ve been there.は「そこに行ったことがある」だけではない

ドラマを見ていると、「この英語、面白い言い方だなあ」と立ち止まりたくなる表現があります。

最近、そんな一言に出会いました。

『The Mentalist』シーズン3・第9話 Red Moon で、Patrick Janeが言う、

“I know I can. I’ve been there.”

というセリフです。

直前の会話はこうです。

Jane:

“Let me talk to him. I will persuade him to drop the notion of revenge. I’ll put him back on the right path.”

Hightower:

“You think you can do that?”

Jane:

“I know I can. I’ve been there.”

この I’ve been there. が、とても面白い。

“I’ve been there.”=「私もそこにいたことがある」?

もちろん、文字どおりなら、

I’ve been there.
=私はそこに行ったことがある。

です。

でも、この場面では物理的な場所の話ではありません。

Janeが言っているのは、

「私にはできる。自分もそこにいたから。」

ということ。

つまり、

「自分も復讐に取りつかれていた人間だから、彼の気持ちがわかる」

という意味です。

ここでの there は、「あの場所」ではありません。

there = その心理状態、その状況、その経験

なのです。

“there” が「場所」から「経験」になる

これが英語の面白いところだと思います。

たとえば、

I’ve been there.

と言われたとき、

「そこに行ったことがある」

という物理的な意味だけではなく、

「私もその経験をしたことがある」

「私も同じ状況になったことがある」

「その気持ち、わかるよ」

という意味になることがあります。

たとえば友達が、

“I studied all night and still failed the test.”

と言ったら、

“I’ve been there.”

で、

「私もそれ経験あるよ」
「わかるよ」
「私もそうだった」

という意味になります。

日本語では「経験する」「同じ思いをする」「そういう状況になる」など、別の言葉を使って説明することが多いですよね。

英語では、それを there という「場所」に置いてしまう。

「私も、その場所にいたことがある」

という発想です。

Janeにとっての “there” はどこなのか

そして、この場面ではさらに深い意味があります。

Janeは妻と娘をRed Johnに殺され、その復讐を人生の大きな目的にしています。

実際、このエピソードの少し前にも、LisbonがRed Johnを法廷に送るべきだと言うのに対して、Janeは、

“Red John is mine and I will exact my revenge on him.”

と、自分自身の復讐心をはっきり口にしています。

つまりJane自身が、

「復讐に取りつかれている人」

なのです。

だから、復讐をしようとしている若者に対して、

“I know I can. I’ve been there.”

と言える。

「彼を説得できると思う」ではなく、

「私にはできる。自分自身がそこにいたから。」

なんですね。

この there の中には、Jane自身が経験してきた「復讐に取りつかれた状態」が全部入っているように感じます。

“I know I can.” も重要

もう一つ面白いのが、

You think you can do that?

I know I can.

です。

Hightowerは、

「あなたにそんなことができると思うの?」

と聞いています。

普通なら、

I think I can.

「できると思う」

となりそうです。

ところがJaneは、

I know I can.

「できるとわかっている」

と言う。

そして、その理由が、

I’ve been there.

です。

つまり、

I know I can.
I’ve been there.

という二つの短い文がつながっています。

「できると思う」のではない。

自分が実際にその状態を経験しているから、できるとわかっている。

というわけです。

日本語訳だけでは見えにくい英語

こういう表現は、

I’ve been there.

「私も経験があります。」

と訳してしまえば、意味は伝わります。

でも、それだけでは英語の面白さが消えてしまいます。

Janeが言った

I’ve been there.

を、

「俺も、その場所にいた。」

と一度頭の中で考えてみる。

すると、その「場所」が物理的な場所ではなく、

復讐に取りつかれた心理状態

だとわかってくる。

そう考えると、Janeの一言が急に立体的になります。

英語を日本語に置き換えるだけではなく、

「英語話者は、この状況をどういうふうに捉えているんだろう?」

と考えてみる。

ドラマの英語には、そういう発見がたくさんあります。

そして、この I’ve been there. は、その典型的な一例だと思います。

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